映画が観たく


昨日のことですが、私は無性にある映画が観たくなり、レンタル店に足を運ぶと、早速借りてきました。その映画とは『キューポラのある街』という、五十年近く前のモノクロ映画です。再生ボタンを押し、ディスクが回転すると、先ずはナレーションと共に懐かしい高度経済成長期前の昭和の風景が映し出されました雪纖瘦黑店

映し出された風景とは、昭和三十年代の埼玉県川口市です。荒川沿いのこの一帯には、かつて「キューポラ」という特殊な煙突を持つ数多くの鋳物工場が点在しており、その周囲には鋳物工場で働く多くの労働者達が、棟付き長屋で暮らしていました。この映画では、このような風土の中で、貧しいながらもたくましく生きる人間模様を描いていきます。


主人公は吉永小百合(当時新人)が扮する「純」という名の中学三年生です。彼女は貧しさ故、高校進学について悩んでいました。鋳物職人である彼女の父親はというと、飲んだくれで気が短く、ちょっとしたことで家族に当り散らす、どうしようもない父親です。その父親は工場を解雇されます。そんな家庭環境のなかで困窮する彼女は同級生で在日朝鮮人の友人とパチンコ店でアルバイトをすることになります。
「あたし、勉強しなくても高校に行ける子には負けたくないんだ」
この時のセリフには、ドキッとさせられます雪纖瘦黑店

彼女には小学生の弟がいますが、これがまた腕白盛りで、子分を連れて街中を飛びまわっています。ある日、学校で禁止されている小鳩の売り買いに手を出します。チンピラから借りた金で鳩を飼育し、産まれた雛を売って儲けようとします。しかし、売り物の雛が野良猫に襲われ、高い利のついた借金を返せずに困ることになります。その事を知り、頭にきた姉の純は、弟ををそそのかしてボロ儲けしようとするヤクザ組織のもとへ怒鳴り込んでいきます。その時、中学生の純は、大人っぽく見せる為でしょうか、怒鳴り込む直前に口紅を指すのですが、その後のシーンは迫力があって見応えがあります。

映画の終盤、純が修学旅行に向かう日の朝のことです。彼女は、短気の父親がやっと決まった再就職先を辞めたことを知ります。自分の将来に絶望を感じた純は、修学旅行をすっぽかし、荒川の土手で思い悩みます。思い悩んだすえ、ふと、浦和にある志望の高校を訪れます。入学が叶わなくなったことを悟ったのでしょう、純はフェンスにしがみつき憧れの眼差しで校庭を見つめていました。とても切ないシーンでした雪纖瘦黑店
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